武勇伝 [諸行無常]
初対面で感じた相手の人柄は
たいてい当たっているというのは
よく聞く話です
たしかに、何気なさの中に
その人の人となりは滲みでるものかもしれません
その一方で
初対面ではよそ行きの顔をしている相手の
親しくなってからの身勝手さに
「こんな人とは思わなかった」と感じるのも
よくある話です
ただ
初対面から
敵意を秘めた何やら異様な眼つきをした人には
注意が必要かなと感じます
かつて職場で
そうした眼つきの女性に
出会ったことがあります
一方で
誰かが転ぶと
嬉々として目を輝かせ
ほくそ笑む人でもありました
その女性には
一つの変わったくせがありました
誰もが黙々とPCに向かい
職場内がシーンと静まり返っている中で
突然 誰に言うともなく話し出すのです
内容は「いじめ武勇伝」です
「あんたの席に去年まで座っていた人
あたしがいじめて追い出してやった」
と宣戦布告されました
彼女の武勇伝の中で
二つほど
忘れられないエピソードがあります
その一つ目
「何人かでボートに乗ってたんだけどさ
一人だけ ろくに泳げないやつがいてさ
面白いから突き落としてやった
パシャパシャもがいてやんの
滑稽ったらありゃしない」
みんな 黙々と仕事して
誰も返事する人はありません
もう一つ目・・・
「屋上から飛び降りた人がいるっていうんで
見に行ったんだ
そしたらさ
足元に これくらいの茶色いハンバーグみたいなものが落ちていて
何だろうって分からなかったんだけど
警察の人が
遺体の一部探しているのを聞いて
あ あれだ!!って」
話し続ける彼女の目はキラキラと輝いていました
この時も
職場内に響くのは
キーボードをたたく音のみ
誰も彼女の話題に返事を返す人はいません